現在、口腔内スキャナーは歯科業界で非常に人気のある装置となっています。歯科医師は通常、口腔内データを取得するために、患者の嘔吐や吐き気を引き起こす可能性のある印象材による型取りに代わり、口腔内スキャナーを使用します。また、口腔内スキャナーは、印象材の輸送、模型作製、実体模型のスキャンといった従来の手順を省くことで、コストと時間を節約できます。このようなメリットにより、口腔内スキャナーは広く受け入れられており、多くの歯科医師に使われるようになっています。これにより、デジタル診断・治療に向けて第一歩を踏み出しました。
とはいえ、口腔内スキャナーが広く使われているにもかかわらず、取得した咬合データが正しく、患者の口腔内データと同じであることをどのように確保できるのかを気になる方もいらっしゃると思います。本文では、これらの内容に焦点を当て詳細にご紹介します。
咬合とは?
技術的な観点から言うと、咬合とは上下顎の歯が噛んだり、休んだりするときに、互いの接触関係を指します。これはとても重要なことであり、インプラント学や歯列矯正、補綴学においても非常に大きな役割を果たしています。口腔内スキャナーで正確な咬合データを取得するために、多くのことを考慮に入れなければなりません。
口腔内スキャンにおける咬合データに関するよくある質問
歯列データのズレ
図1と図2は、歯列のズレを示しています。図1に示されるように、見てすぐ分かります。図2では、赤い矢印はデータがズレた位置を示しています。
上下の歯肉データのズレ
図3と図4は、歯肉のズレを示しています。赤い矢印はデータがズレた位置を示しています。
乱れた/ズレた咬合関係
図5と図6は、それぞれ乱れた(図5)/ズレた(図6)咬合関係を示しています。
上記は、咬合データをスキャンするときによくある3つの問題について述べましたが、さて、不正咬合はどんな問題をもたらすのでしょうか?
不正咬合による問題
まずは、不正咬合は設計と作製の難しさを増します。
図7と図8は正常な前歯の咬合、後歯がやや開いている状態を示しています。
歯科技工士にとって、口腔内の写真がない、または明らかな咬合磨耗がないと、スキャンデータが口腔内のデータと一致するかどうかを判断することは困難です。患者がすでにクリニックを離れて、再スキャンを実際に行うことができない場合、最も一般的な方法としては、模型を印刷し、上顎フレームを再構成することにより、正しい咬合形態を決定することです。
図9:左側咬合。図10:右側咬合。図11:正面咬合。
左側・正面・右側など、すべての咬合面が開いている場合、歯科技工士は開いている状態の数値を決めることができません。正しい数値がないと、正確な復元を行うことができません。次に、不適切な補綴物により、患者が治療体験に不快な思いをすることがあります。
図12と図13から、精確な咬合データがないと、最終的に修復された咬合関係が不正になることが分かります。
図14と図15:精確な咬合データがないと、CADを使う中である程度の不確実性が生じてしまいます。
咬合データが精確でないと、最終的に補綴物の欠落や突出につながるため、長期間にわたる咬合調整が必要になり、患者に治療体験に対する不快な思いをさせてしまいます。
最終的に正常咬合に修復できない原因:臨床からの意見
口腔内スキャンを行う前に、咬合関係を正確に予測できません。
先臨三維からの提案:
咬合データをスキャンするときは、まずは咬合関係を正しく確認してから、開始ボタンをクリックしてスキャンする必要があります。
スキャン中に、患者の下顎を手で支えることで、患者の咬合位置が固定されていることを確保します。
片側咬合のスキャン範囲が大きすぎます
図16と図17:スキャンする際に、取得された咬合データが多すぎます。
先臨三維からの提案:
咬合範囲の選択:患者の口の中全体をスキャンする必要がある場合、左右各側からそれぞれ2~3本の歯の咬合範囲をキャプチャすることをお勧めします。歯がある部分の咬合精度は歯がない部分よりも高いです。
図18と図19:咬合データを収集するための正しいやり方。
作業モデルにおける軟部組織のデータが多すぎます
図20:軟部組織のデータがアバットメントを覆っています
先臨三維からの提案:
歯頸線より4mm下の歯肉データを収集し、全過程においてAI機能により自動的にスキャンすることをお勧めします。
図21:歯肉情報を含むスキャンデータ。
咬合アライメントの場合、軟部組織データが多すぎます
図22:上顎の情報が下顎の情報とズレています。
先臨三維からの提案:
咬合状態をスキャンするときは、スキャン中に干渉しないように、不要なデータを削除してください。そうでないと、咬合データの精度に影響を及ぼします。
図23:咬合データがはっきりスキャンされています。
最終的に正常咬合に修復できない原因:ラボからの意見
臨床とラボの間における咬合データの送信にはエラーが発生します。
先臨三維からの提案:
矯正治療や口全体の咬合再建、遊離端修復など複雑な場合には、可能であれば、歯科技工士が患者の咬合状態をより正確に判断するために、バイトワックスを使用することをお勧めします。
図24:遊離端欠損の症例
図25:口半分の咬合再建
特に咬合関係が不安定な場合、設計と作製上には偏差があります。
先臨三維からの提案:
矯正治療や口全体の咬合再建、遊離端修復などの場合、咬合関係がよく不安定なため、歯科技工士が模型を印刷し、バイトワックスと咬合器を用いる従来の方法で咬合再建を行うことをお勧めします。
本文では、臨床とラボからの意見を踏まえ、不正確な咬合を引き起こす原因や不正咬合による問題について分析するとともに、問題を回避するためのいくつかの提案を行いました。正確な咬合データを取得するのにお役に立てれば幸いです。