医療法人NATURAL TEETH 理事長
長崎大学歯学部臨床教授
東北大学歯学部非常勤講師
臨床応用顕微鏡歯科学会 公認インストラクター
はじめに
2008年に某メーカーの光学印象の機器をミリングマシーンと共に購入しました。僻地にある歯科医院にとって、1日でセラミックが医院内で作成できて、装着まで出来るという言葉に心弾ませ大きな投資をしました。ところが使い始めると、口腔内を乾燥させパウダーを綺麗に歯の表面に乗せないと印象が採れない。時間もとてもかかる。マージンの精度が低く、ミリングして出来上がった補綴は割れやすい。メーカー主催のセミナーで、ギャップがあるマージンはレジンセメントで埋めるので大丈夫という講師の説明から、アナログの臨床に並ぶには、まだまだ時間がかかると気付きました。購入機器は医院の不良債権となり、しばらく光学印象から離れました。
2013年にマイクロスコープを導入しました。導入当初は治療に入るまでのピント合わせなどに時間がかかり、なかなか上手くならない状況が続きました。多くの歯科医院で起こっているようにオブジェとなりそうでした。そんな時に2014年4月に山梨でご開業の秋山勝彦先生の講演を聞く機会がありました。マイクロスコープをご自身の目のように自在に使う直視臨床が存在し、世界で類を見ない臨床結果を出せる先生が世の中にいると驚きました。すぐに師事することを決め、2014年6月から秋山先生が主催される研修会MATIに参加し、2021年10月に約4年全10回のペリオスペシャリストコースを修了。2022年10月インストラクター試験に合格、現在、臨床応用顕微鏡歯科学会ハンズオンコースにおいて、これからマイクロスコープを導入したい先生達のお手伝いをしています。
2024年2月にシカゴで開催されたミッドウィンターに参加した際、SHINIG 3DのブースでAoralscan3 Wirelessの実機を初めて触りました。光学印象を再度導入するなら、スピードが早く、精度が良い、コードレスで取り回しが良い臨床が出来るコレしかないと確信し日本での発売を待つことにしました。秋にようやく発売となり、すぐにフェイススキャンのMetiSmileと共に導入しました。
今回、秋山先生ご考案のスリーステップ秋山メソッドを応用した直視臨床下で、秋山のマイクロバーカリエス用、マイクロエキスカーベーター、シークエンシャルバーを使いナビゲーション型形成方法秋山システムにて形成、印象、セットした症例を紹介します。
症例
50代女性。主訴:右下の奥歯に物が詰まる。
46と47間に食片圧入があり、デンタルレントゲンで46の遠心にカリエスを認めました。

臨床の実際
スリーステップ秋山メソッドを応用し、マイクロスコープ下で治療を行った後、Aoralscan3 Wirelessにて光学印象を採ります。
マイクロスコープ下の画像
秋山のマイクロバーカリエス用、マイクロエキスカーベーター、シークエンシャルバーを使いナビゲーション型形成方法秋山システムにて形成を行います。

ラボワーク
Aoralscan3 Wirelessにて光学印象後、クラウド上に送信し、福岡のエボリューションラボ 山田泰寛先生に作成をお願いします。

治療前と治療後
46にジルコニアインレーをセットしました。患者さんは、セット後非常に満足されています。

おわりに
光学印象に早く取り組み過ぎたばかりに不良債権化し、新たに導入する機会を伺っていました。この数年、様々なメーカーの製品が出揃い比較検討した結果、SHINIG 3DのAoralscan3 Wirelessを導入しました。十数年前に苦労した経験が嘘のようにストレスフリーで、アナログ印象を採る機会が減ると確信しました。今後、MetiSmileを併用した矯正治療にも応用していきます。
さいごに、マイクロスコープ臨床と共に光学印象に取り組みたいと思う先生の参考になれば幸いです。