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SHINING 3D MetiSmileの フェイススキャンデータに エラーがないか確認する方法

たかはし歯科

高橋良介

はじめに

今回は、SHINING3D Aoralscan3と連携できるフェイススキャナーである SHINING3D MetiSmileについて、スキャンやマッチングの結果にズレがないか検証する方法を紹介します。

フェイススキャンMetismileの有効性

SHINING3D MetismileはSHINING3D Aoralscan3を用いて取得した歯列データと、フェイススキャンデータを簡単に自動でマッチングしてくれる機能を有しています。

そのため汎用の3Dスキャナー等と異なり、操作に熟練したドクターでなくてもスタッフに操作を任せても実用に耐えるフェイススキャンデータを簡単に得ることが可能です。

Metismileの専用スキャンソフトであるFScanには矯正コンサルテーションツールであるConsulOSソフトウェアが統合されています。これを用いてアライナー矯正のコンサルテーションを、患者さんの歯列と顔貌を考慮して行うことができ、それをすぐにQRコードで患者さんに共有することができます。

また連携する技工士さんに前歯のクラウン等補綴製作を依頼する際に、Metismileで取得したフェイススキャンデータを共有して患者さんの顔貌を見ながら設計を行ってもらうことも可能です。

フェイススキャンデータを取得することにより、上顎前歯部の補綴治療などについて患者さんの希望に沿ったクラウン形態を反映したり、正中や合平面のズレがない補綴を製作することができるようになるなどの有効性があります。

技工士さんを迷わせないために

Aoralscan3による口腔内スキャンデータとMetismileによるフェイススキャンデータを統合して技工士さんに送信する際には、通法どおりに顔貌写真も一緒に添付することがあるかもしれませんが、ご存知の通り顔貌写真に関しては撮影角度によって患者さんの情報が異なって見えることがあります。そのためフェイススキャンデータが統合されていると技工士さんはCAD操作が楽になりますが、多数歯の補綴設計を行う時などにフェイススキャンデータが本当に間違いなく マッチングされているのか、複数の情報があるがそれぞれにズレがある場合、どのデータを一番優先したら良いか迷ってしまうこともあるということを聞きました。

Metismileによるフェイススキャンも、口腔内のスキャニングと同様にス キャン時間が必要以上にかかってしまったりスキャンに不慣れな状態で操作を行うと、精度が劣ったりズレが生じてしまう可能性も稀にあります。

そこで当院では技工士さんに補綴設計をしてもらう際に、データの信頼性を担保し技工士さんが迷わずMetismileのデータを信頼し作業を進められるように工夫を行なっているのでその方法を紹介いたします。

患者さんの鼻翼や目元を含んだスキャン

チェアサイドで取得したフェイススキャンのデータが精度が高くズレがないことを技工士さんに伝えるために、今回は患者さんの鼻翼や目元までを含んだスキャンを追加で技工士さんに送ることを考えます。

そのためには、(先日私の方でも紹介しました「リップスキャン」を取得する方法と共通しますが)Aoralscan3のスキャンソフトであるIntraoralScanにおいてオーダー情報登録において「補綴物」を選択した際に右下の「診断模型をスキャン」を「はい」と選択する必要があります。

これにより重ね合わせのデータを得られますので、そちらを利用して鼻翼や目元を含むスキャンを追加マッチングします。

今回の目的は、上顎支台歯データと患者さんの美容や目元の情報を完全に マッチングしたデータを技工士さんに添付することです。Metismileの仕様も考慮し、Pre-Ope上顎データに上顎歯列データと鼻翼や目元を含んだ広範囲のス キャンを取得します。上顎データに、通常の上顎歯列データを登録できるように工夫します。

具体的な方法は、以下の通りです。

Pre-Ope上顎データのスキャンステージにおいて、まずは上顎歯列を通法のように丁寧にスキャニングします。その後写真のように部分ロック機能を使い、上顎歯列データが上書きされないようにロックしておきます。

その後、患者さんにアングルワイダーを装着していただき、上顎前歯部からスキャンを行いマッチングを開始し、そのまま鼻翼や目元までスキャン連続性を保ったまま取得します。この口唇や鼻翼までのスキャニング時には口腔内スキャンモードをオフにしておきます。

これにより上顎歯列データと患者さんの顔貌の一部をマッチングした状態でデータを保存することができます。

下顎データやバイトスキャンに関しては通法どおり取得します。

次に、上顎歯列のスキャンステージに進み、美容や目元といった口腔内データ以外のフェイスデータを削除することで目的の上顎歯列のみのデータが得られます。

以上によりAoralscan3でのスキャン操作は完了です。

Metismileによる自動マッチング

Metismileのソフトウェア、FScanを起動すると先に取得したAoralscan3による口腔内スキャンデータを含むケースが表示されるので、そちらを選択し「新しいフェイススキャンオーダーを作成しますか?」から「はい」を選択、フェイススキャン画面に進みます。

Metismileによるフェイススキャンは非常に簡単で精度も高いのですが、患者さんの表情が大きく動いたり、患者さんに左右の顔の移動を依頼する場合には顔の移動がスムーズにいかないとマッチングエラーが起こり顔貌の形状が崩れることもあります。大きくデータにズレが視認できた場合はすぐ気づけますが、細かいエラーの場合はデータを受け取った技工士さんを悩ませるタネになってしまいます。

そのため、フェイススキャンを行うポイントとして以下の2点が挙げられます。

・複数のフェイスデータを必ず取得すること

・必要なスキャンデータを得られる最小時間でスキャンを終えること

複数のフェイススキャンを取得する際には、表情を変えて上顎前歯の見え方を確認しインサイザルエッジポジションを検討することも有効です。もし単純にズレを検証するだけであれば、先日のAoralscan3のソフトウェアアップデートで可能になった複数バイト取得機能と同様に、フルスマイルのフェイスデータを複数取得しておくだけでもデータの正確性を確認しやすくなります。

またアングルワイダー等で口唇をリトラクトした状態のスキャンデータについても取得しておくと鼻翼や目元を含むスキャンと検証する際の精度がさらに向上し、有効と考えられます。

またFScanソフトウェアの仕様上、初回にスキャンするフェイススキャンデータがAoralscan3で取得した口腔内スキャンデータとのマッチング、 ConsulOS等で使用するメインデータになることを覚えておきましょう。患者さんにフルスマイルを指示し、場合によっては撮り直しをしてでもこの初回のフェイススキャンは綺麗に撮っておくべきです。その後、必要なら顔から下の不要データを削除しておきます。

フェイススキャンを取得後に行う歯列データとのマッチングは、数回のク リックを行うだけでAIが自動で行ってくれるので簡単です。また、複数のフェイススキャンデータを取得した際にも基本的には自動でマッチングが可能です。

マッチングデータをシェアサイドでも簡単に確認し、目視で大きなズレがないことがわかれば口唇の内部をソフトの操作で自動で削除し、口腔内スキャンデータによる歯牙がフェイスデータの口唇内部から覗くような形にして保存します。その後に技工士さんにデータ送信を行います。

技工士さんによる制度の検証

今回の鼻翼や目元を含んだデータは、上顎歯列データにマッチングした状態で技工士さんに送信できているので、技工士さんは上顎前歯の補綴設計を行う前にEXOCAD等のCADソフト内のアラインメントツールを用いてフェイススキャンデータの正中線や角度にずれがないか検証することが可能になっています。

また検証の結果、上顎歯列だけで行われるFScanのフェイススキャンマッチングにもしズレが認められた場合は、患者さんの鼻翼や目元を含むAoralscan3によるスキャンの方を優先するようにします。

フェイススキャンデータをそちらに合わせて鼻翼や目元をマッチングポイントにしてマッチングし直すことによって、患者さんを再来院させるようなこともなく補綴設計を続けることができます。

このように、通常の簡単なステップの上に+ αで追加データのスキャンを重ねておくことにより技工士さんとのコミュニケーションが取りやすく、技工士さんにとってもどのデータが正しいのか迷うことなく補綴設計をスタートさせることができると考えています。

なお口腔内スキャンを用いて鼻翼や目元までの歯から離れた地点まで広範囲にスキャニングをしていくと、筆者の体感としては左右に大きくズレる事はありませんが、フェイススキャンデータと前後にわずかに鼻翼の位置がずれるように見えることがあります。左右にズレがないデータについては信憑性が高いとして扱って問題ないかと思います。

これはスキャナー機器のデータ取得の方法の差によって起こるものと考えられ、可能であれば連携する技工士さんと重ね合わせの差がどのように起こりうるか情報を共有しておき対応を考えておきましょう。技工士さんサイドからも、 フェイススキャンのデータ特性が掴みやすくなると思います。

補綴物製作についてもテンポラリークラウンなどからフェイススキャンの活用をスタートし、データ処理や精度確認方法等のすり合わせを行った後に最終補綴製作や大規模な補綴設計をフェイスデータを利用するように段階を踏んでいくことをお勧めいたします。

この情報がお読みいただいた先生方の日々の臨床の一助になれば幸いです。