上顎前歯のインプラント修復は、咀嚼機能を回復させるほか、天然歯と同様の外観を保つ審美性を再構築するためにも非常に重要です。デジタル技術により、これまでの業務プロセスが大幅に簡素化され、治療の期間が短縮されます。
こちらの症例の担当医は、杭州歯科病院の汪涵医師と周熹技工士です。汪涵氏は、副主任医師、デジタル医療プロジェクトディレクターおよびデジタルインプラント修復の専門家です。周熹氏はデジタルテクノロジーセンターのマネージャーおよび歯科技工士です。
症例情報
患者情報:39歳女性
主訴:前歯の歯茎が長年変色しています
現病歴:この患者は10年以上前にセラミック修復を受けていましたが、歯肉退縮により以前の金属修復物の縁が徐々に露出し、審美的な障害をひどく引き起こしたため、来院し治療を求めました。
既往歴:薬物アレルギーおよびその他の疾患なし
臨床検査の結果、左上1番と右上1番をさらに修復する必要があると診断しました
治療計画:左上1番と右上1番は以前に修復されたクラウンを除去し、右上1番全体をセラミックで新しく補い、左上1番を抜歯し、抜歯即時埋入を行う予定です。
検査:左上1番と右上1番はセラミッククラウンで、補綴物の辺縁部分が出っ張り、辺縁歯肉が黒く退縮しています。薄い歯肉のバイオタイプで、歯間乳頭が赤く腫れています(図1)。
CBCT検査:左上1番は根管治療後、ポストとコアの修復が行われました。古いポストが根管から歯の唇側方向へ中央1/3までに偏位していました。歯槽骨の幅は7.7mm、唇側骨板は1mm。右上1番は根の先に明らかな吸収の暗影が見られません(図2)。
口腔内スキャンデータ
医師は、治療計画を決定した後、Aoralscan 3口腔内スキャナーを使用し、高精度スキャンを行い、患者の口腔内データを迅速に収集し、高解像度のCBCTデータと合わせて、次のデジタルインプラントガイドの設計に備えます(図3)。
CBCTデータ
プラン設計
インプラントプラン設計
口腔内スキャンデータをCBCTデータに合わせて、インプラントガイドに対して3次元的な位置を設計することにより、インプラント手術の安全性と正確な修復位置を全面的に保証し、審美的修復を実現します。この方法により、抜歯窩の大きさやインプラントの位置および初期安定性、前歯の審美性を十分に考慮することが可能です。
Exocadを使用して仮歯を設計する
フェイススキャンデータとデジタルスマイルデザイン(DSD)を結び合わせたこのCADソフトウェアで、患者のニーズに合った仮歯を設計し、手術中に迅速に仮歯を装着できるように事前に作ります(図4)。
インプラントガイドをプリントする
歯科用ソフトウェアAccuWareは、レイアウト、サポートおよびスライスの追加を自動的に完成することができます。先臨三維AccuFab-D1sでデジタルガイドをプリントし、製作します(図5)。仮歯作りは術前に実施済み(図6)。
デジタルインプラント手術の流れ
図7 – 左上1番と右上1番の既存のクラウンを除去 図8 – 左上1番を抜歯 図9 – ガイドの仮装着 図10 – 穴あけの準備 図11 – インプラント埋入 図12 – 一時的な土台設置 図13 – 仮歯装着 図14 – 仮歯装着 図15 – 術後の口腔内写真
症例のまとめ
この症例では、前歯を抜歯し後、あらかじめ設計されたガイドに従ってインプラントを目的の位置に入れました。手術処置はわずか5分で完了し、インプラントが理想的な位置に埋入されました。患者は治療の時間に大変満足し、不快感も伴いません。
術前のスキャンに基づき、仮歯を事前に作り、術後の即時修復により、チェアサイドでの治療時間を大幅に節約できます。エマージェンスプロファイルは天然歯の頚部の輪郭を完全に再現し、後期の永久的な修復に適した条件を作り出します。
この症例は、先臨三維と杭州歯科病院が協力して完成されました。汪涵医師と周熹技工士のご支持とご信頼いただき、誠に感謝いたします。